小説

『幸福の青いカラス』エルディ(『青い鳥』)

 鳥鳥鳥鳥烏鳥鳥鳥

 他人の分まで吟味してあげようというおせっかいな人でもいない限り、どうせみんな自分の以外興味ないでしょうから、そっとしておけばばれないだろうと思ったのです。実際何事もなく数日過ぎていきました。

 問題が発生したのはクラスで一番頭のいいの山本くんの一言でした。自己顕示欲満々のおせっかいが一人いたのです。山本くんがわたしのを指さして言いました。
「あれ、字が違う」

 しかし、それだけならまだよかったかもしれません。人間だれしもちょっとした間違いはありますから、笑ってごまかすことができたのです。それなのに親切にも山本くんは付け加えました。
「青い鳥じゃなくて、青いカラスだ」

 最初はだれも何のことかわかりませんでした。もちろんわたしもです。
 山本くんは自慢げにチョークで黒板に字を書きながら解説し始めました。
 それによると、鳥の頭の部分の中の横棒がない「烏」という字はカラスと読むそうです。たった一本足りないだけで、鳥はカラスになってしまうのです。
 みんなそろって「へえー」となりました。「青いカラスなんてありえねーよ」と笑いだす人もいました。

 これでは『青い鳥』のお話とおんなじです。
 チルチルは思い出の国というところで青い鳥をつかまえます。ところが持ち帰るときになると、青い鳥は黒くなってしまうのです。わたしのも青い鳥のはずが烏に変わってしまったのです。
 とにかく、悪気はなかったのでしょうけど、山本くんの知識のひけらかしによって、わたしのした小さなミスに名前がついてしまったのです。「うっかり」とか「あわてんぼう」とか「そそっかしい」とか、かっこいい言い方なら「ケアレスミス」とか、落語風な言い方なら「そこつ」とか、いろいろあるのに、たった一本の線を書きそびれたことを「青いカラス」と名付けたのです。
 しまいには男子の何人かがわたしのことを「青いカラス」と呼び始めました。たった一つのミスをあげつらってそんな言い方ひどいと思います。

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