「うん。トーコ、献血したから頭くらくらするって言って」
「そうそう。つばめも今度一緒に行こうよ。私、あと二週間したらまた献血できるから」
「う、ん」
何気ない言葉に私の胸は冷たくなった。
桐子と友達になって、二週間が過ぎた。あと二週間したら、ひと月経ってしまう。
それは、私のタイムリミットだ。
桐子が不思議そうに私を覗き込んで、はっとした。桐子も思い出したのだろう。私に、「今度」が無いことを。
「つばめ、ごめ」
「ほら、暑いから早く行こう」
出来るだけ明るく笑って、私は桐子を追い越した。
――ごめんね、桐子。謝りたいのは、私の方なのに。
言い出せないままに自動ドアを通り抜けると、すうっと冷たい風が背中を冷やし、いらっしゃませえと平坦な掛け声に迎えられる。いつも通りの日常が戻ってきて、私も、そしてたぶん桐子も、ほっと息を吐いた。
「席、取っておいてあげるから。トーコは先に買っておいで」
「うん。ありがと」
桐子と一緒にお店には入るけど、私は外で食事をしない。家に帰って食べるから、と言うと、桐子はそれ以上追及しなかった。だからいつも、席の確保は私の役目。今日はお昼時よりだいぶ早いせいで、席を取る必要なんてないくらい空いていたけれど。
戻ってきたトーコのトレイには、いつものハンバーガーとポテトとジュース。私は空っぽの自分のスペースに肘を付いて、トーコの食事を眺めている。
「ジュースくらい、飲めばいいのに。熱中症になるよ」
「大丈夫、ここ涼しい」
「だからそうじゃなくって」
トーコの唇にくっついたパン屑を払いながら、私はさりげなく尋ねた。
「ね、トーコ。献血って、どんな感じ?」