家に帰ると、頭が冷静になった。
本当は、メイは妊娠なんかしていなくて、わたしは唯のお金をむしるとるカモだったんだ。そうだよ、だって、メイが本当に妊娠していたかんて証拠見てない。あのぺたんこのあのお腹に、命が宿っているなんて思いたくもなかった。
メイという名だって、偽名かもしれない。
そうだったら、いい。きっとそうだとわたしは思いこもうとした。
きっとそう、あの出会いから仕組まれていたのかも。なくなった財布だって、メイがすったのかもしれない。
わたしは思った。メイが言っていた中学の同級生、久野ゆき。あれは、メイのことだって。考えれば、考えるほど、そうだという気がしてきた。
紙ナプキンを目に当てると、インクがにじんだ。
締めきった部屋の窓を開けると、雨は上がり、真っ青で、雲一つない空が広がっていた。もうそこに夏が来ていた。