わたしが勝手に秘密を共有した気分になっただけで、相手はわたしを軽蔑したかもしれない。
その時、電話の着信音の微かな音に気付き、わたしは水しぶきを気にせず、お風呂から飛び出ると、携帯電話に飛びついた。
「電話くれた?」
メイの声にかぶさるように、わたしは言った。
「ねえ、会える?」
メイと三度目に会ったのは、駅のすぐ横にある児童公園だった。
人通りの多い駅前から数メートルしか離れていないのに、緑の茂った木々が目隠しをして、公園は風に吹かれる葉っぱのざわめきに溢れている。
コンビニにより、缶ジュースとウーロン茶で、つまみだけはイカや乾き物、いわゆる酒のつまみを買って、気分だけは酒盛りだ。
「お酒飲まないの? わたしに気を使わないでね」
「飲めないから、いいんだよ」
そんな他愛もないやり取りをして、公園にたどり着いた。
公園の中央には、大きな木があった。それを見上げて、メイは言った。
「うりこひめもこんな木に縛りつけられてたのかな」
今夜はメイの口数がやけに多かった。
「あの後、考えたんだ。うりこひめはさ、わざと焦らしたんじゃないかな。本当は人一倍、外の世界やあまのじゃくに興味があるくせに」
二人でベンチに座った。ベンチの真ん中には手すりがあって、それがわたしとメイの埋めようのない距離間のように感じられた。
急に、メイが声を潜め、ささやくように言った。
「調べたんだけど、あの話、いろいろな終わり方があるの知ってる?」
わたしは首を横に振りながらも、考えを巡らせて、親にいいところを見せたい子供のように言葉を絞り出した。