小説

『地球話打出騒動(てらがたりうちでのそうどう)』石原計成(『御伽草子』より『一寸法師』)

 西暦一〇〇XX年、巨大な宇宙船が地球に降り立った。ハッチが開いて光の輪の中から降りてきた二人の宇宙人は、その荒廃した姿にため息をついた。
「これは酷くやったもんだね」
「本当にここで合ってるのか?」
「座標は正しい。ここで間違いない」
「…我々の技術をおもちゃとして与えて文明の発展を誘導し、共食いさせて星を乗っ取る。自分が生まれ育った星のやることながら、あくどい手口だ」
「しかしここまで荒れてしまっては我々だって住めないだろうね」
 二人は改めてぐるりを見回した。
「うん…。海は枯れ、生体の反応は一切無い。これほど徹底的に自殺した星はここくらいだろう。倫理観と知性を欠いた生きものが技術を手に入れると、こうなるということだ。良い教訓を得たと言えば言えるが…不毛なことだ」
「まったくだね。さっさと帰って、この戦略の効率と支配領域拡大の意義を再検討するように要請しよう」
 それがいい、と頷き合って、彼らは自分たちの銀河に帰っていった。…

 …そのきっかり一時間後、宇宙人がさっきまで立っていた、真っ赤に焼けただれたダミーの地球はみるみる小さくなり、打出の小槌を携えた世界政府総裁のポケットに収まった。そして、森と海と科学とが調和するほんものの地球がそこに現れた。
「舐めてもらっちゃ困るよな」
 総裁の一言に、全世界が喝采を贈った。

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