小説

『よひらの夢』葉野亜依(『紫陽花に纏わる言い伝え』)

「本当に、若いっていいわねぇ」
 草太の後ろ姿を微笑ましげに見送って、祖母は一言呟いた。そして、踵を返し、とある一点を向いてゆっくりと祈るように唱えた。
「今日のよき日に紫陽花の金袋、紫色ぞ我がものと思え」
 祖母が手を合わせるその先――玄関の引き戸の上には、昨日まではなかった一朶の紫陽花が、夏の朝の日差しを浴びてきらきらと輝いていた

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