「…あんなにぴったりくっついた二人組に入れるはずがないもんね」
それにもし、あの二人に挟まれて三つ子みたいに同化してしまったとしたら……。想像しただけで恐ろし過ぎる。やっぱり、離れて見ているのが一番いい。
給食の時間には、いつも悪ふざけする男子がいる。
「ぎゅーにゅーイッキ、いきまぁす!」
席に立ったり人の間をうろうろして、牛乳を飲み干す。先生は別に止めたりしない。止めてくれよと思うけど、声に出すことはできない。
イベントの主催者、松田隼人はこの催事を無視して食事する私が気に入らなかったらしい。
「転入生チャン、麻里香にいじわるされてるのカナー」
と大声で話しかけてきた。
「ちょっと!」
後ろから女王の声が飛んでくる。こんなことで関係悪化させたくないよ。
「カワイソーな転入生ちゃんに、これ、プレゼント」
やっと飲み干したばかりの大嫌いな牛乳が、また机に置かれた。
席の近い松田は私が牛乳嫌いなことに気づいているはずだ。知っていて、わざと楽しんでるんだ。でもこれを飲めば、なんとかこの場はおさまる気がした。手を伸ばすとイーッキ、イーッキ、と声が飛ぶ。
こんなめちゃくちゃにされたいんじゃない。私が欲しいのは心穏やかな日常なのに―—。