「もともと、君たちの働きによるものじゃないか。遠慮は要らないよ」
「でも、ご主人様がいて下さらなければ、私たちだけでは生活をしていけません」
「私だって、今では君のいない暮らしなんて考えられないよ。これからもよろしくな」
これは本音だ。彼女がいて、その料理を食べられたらそれで良い。実のところ、店が大きくなろうと、ならなかろうと、それはどっちでも良かった。もっとも、彼女たちが作る料理が、お客様に喜んでいただけることは嬉しかった。私はその感謝の気持ちを伝えようとしたのだ。
「本当でございますか!?」
「?」
彼女が、はにかんで、うつむいている。
「どうか、したのか?」
「君のいない暮らしなんて考えられない……そのお言葉は、求婚のお申し込みと考えてよろしいのでしょ?」
(何ーっ!? そう受け取るのか!?)
「嬉しい……私、ご主人様に身も心も捧げ、一生涯ついていきます……」
純白の頬を真っ赤に染めている。
(やられた……)
私は、彼女のことを心の底から愛しく思ってしまった。
(そうだな……それはそれで、楽しいかも知れないな……)