「うーん、そうかな」
「絶対そうだよ」
ナナは、断言した。言いたいことを言ったのか、ナナはすっきりした様子で、その後は、子供の話や家族の話を楽しそうにした。
ナナが見せてくる家族写真を見ながら、まことは相づちを打った。
「はぁ」
帰宅早々ため息をつき、座り込むまことにヒロが声をかけた。
「おーい、ため息吐くと、幸せ逃げるぞ」
「うーん、何か美味しいもの、食べに行きたいな」
まことが甘えた口調で言うが、ヒロは取り合わない。
「まことは、最近よく外食してるじゃん」
「嫌味?」
「別にそんなんじゃないけど」
「私はただヒロと行きたいなって思っただけだよ」
「俺は家でまったり食べるのが好きなんだって」
まことがヒロの言葉を無視して、雑誌を開くと、ヒロが呆れたように言った。
「まこと、同窓会あってから何か変だぞ。妙に浮かれたり、落ち込んだり」
まことがぽつりと言った。
「仲良かったから、大人になっても仲良くできると思ったのに」
ヒロは、立ち上がって台所に行った。湯沸かしポッドに水を入れながら、ヒロが言った。
「まことは付き合い良すぎ。やだったら、断る。中学の時とはそれぞれ状況が違うから」
「うん」
「まあ、そんなまことの優しいとこが好きなんだけどな」
「あっ、そう」
まことが軽く返すと、ヒロは湯沸かしポッドをセットし、食器棚から二つコップを取り出しながら、言った。
「だから、結婚しない?」
「え?」
まことが思わず、聞き返すと、ヒロから返事はなく、湯沸かしポッドから蒸気の出る音がし始めた。まことが言った。
「ムードも何もないね。プロポーズってさ、レストランで美味しい食事をした後に、夜景の見える場所で、とかじゃないんだ?」
「ごめん」
ヒロの背中が少し丸まった。