相手チームは、それは二十人近くいるみんながもちろん男の子で、全員揃った灰色地に紺のユニフォーム、背中には背番号もつけている。数字だけで判断するなら、相手をしているのはいつものスタメンではないようだ。隣のグラウンドに目を向けると、同じ格好の、さらに十数人ほどの子たちがいるから、MOMOTAの相手はそのチームの二軍なのかもしれない。こっちのグラウンドには、相手チームの付き添いらしき大人が一人、球審を務めているだけだった。
大きな声を出して、紺のチームのバッターが打席に立つ。胸元には「水谷」と、この地区の名前がついている。キャッチャーの子が立ち上がって、グラウンドに広がるMOMOTAに声をかける。答えるように、両手を上げるみんなが元気な声を返した。
わたしが小学四年生になったときだった。同級生の男の子は次々と地区の野球チームに入っていった。それが当たり前だった。わたしがそこに入るのは、場違いな感じがした。もちろん誰もそんなことは言っていない。でも何か違っていた。他の同級生の男の子たちのように、簡単にそこに入れない空気があった。拒まれているようだった。わたしは結局、父とお店の前でキャッチボールをするだけになった。小学六年生になって、かつての仲間たちがレギュラーになっていく。格好いいユニフォームを着て、誰が四番で、誰がエースなどと話しながらお店の前を通っていく。
「女なのになんで野球やってんだよ」
「なんで親父とキャッチボールなんてやってんだよ」
「変なの」
笑われた。悔しかった。笑われた原因は全て父にあると思った。何も教えてくれず、「ナイスボール」と笑う父に騙されたと思った。誰が本当は変なのか、何が本当は変なのかも理解せずに、父を憎んだ。