千恵子はぐしゃぐしゃと顔をこすり、立ち上がった。化粧も崩れ今の自分の顔はすごいことになっていることは容易に推理できた。
だが恥ずかしさなど、微塵にもない。今の千恵子の胸を満たしているのは娘にたいする果てのない誇りだけだった。
帰ったら、おむすびを握ってあげよう。残り物のお米やおかずなんかじゃなくて、真紀の大好きなものを具材に。
夕食の献立を考えながら、真紀の好きなもので何が一番おむすびにあうのか。そう考えながら歩く足取りは、意外なほどに軽かった。
そんな千恵子の背をほほ笑むように、サルとカニの育てた向日葵は陽に向いて、まっすぐに花を咲かせていた。