小説

『長靴を(時々)はいた猫』福井和美(『長靴をはいた猫』)

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 今日はホテルのグランドオープンの日です。
 新聞や雑誌記者、それにテレビカメラが何台も集まってきていました。何しろ、あの有名な伝説の猫、『長靴をはいた猫』が、このホテルのマスコットキャラクターなのです。
 愛らしい猫の姿を何とかカメラにおさめようと、大勢の人たちがホテルの前で押し合いへし合いしていました。
「本当にお前はたいした猫だね」
 ホテルのパティシエになった三男は、トラののどをそっとなでました。
 ゴロゴロとのどを鳴らしながら、トラはうっとり目をとじました。きっとこれで、ご先祖様も、満足してくださることでしょう。

 

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