小説

『かぐや姫として生きてみる』吉田大介(『竹取物語』)

 次の「蓬莱の玉の枝」、下品を自覚する和志は、「玉」、「枝」ときて思いつくのは「睾丸」、「陰茎」。真珠の入った陰茎は現実にありそうだからと去来した映像を打消し、上品さを加えたつもりで、

二、ルビーの睾丸

 と左隣に記した。書いてみて、歌のタイトルのように見え、一人でにやりと笑った。
 続いて「火鼠の皮衣」に匹敵するものであるが、ネットで絶滅危惧種を検索するといろいろと珍しい生物が出てきた。ニュージーランド・アシカ、揚子江アリゲータなど、かなり個体数が減ってきているようだが、そもそも皮や油を採るために人間が大量捕獲したことが原因。これらの動物の皮の調達を求婚者に命じても、おそらく中古品市場などで製品となった皮を持ってこられるのがオチ。視点を「皮」から「火鼠」に移し、ふと寝室のデスクに置かれたパソコン、そしてマウスが目に入り、「マウス、燃えて触れない熱いマウスなんてどうか」と自分のアイデアに感心しつぶやく。

三、炎のマウス

 自分で書いて、よくわからないが、ネーミング重視でロールプレイングゲームのアイテム風。求婚者がおそらく「どういった物ですか」と訊いてくることが想定されるので、その時に詳しく説明すればよいだろう。
 そして「龍の首の珠」、ドラゴンの玉などこれこそ現代ではゲームやアニメに頻出。何か自分なりのひねりが欲しい。現代において龍のようなものは何かと考え、天空に駆け上がる昇龍のイメージが頭に浮かぶ。そしてロケット、白い煙と炎を噴出して宇宙へと上昇するさまは、映像でしか見たことがない和志だが、まさに現代の龍だと決めつけ、NASAが秘匿する入手困難なデータなど、難題としていいのではないかと考える。筆ペンのふたを外し、直感で一気に書こうと構える。

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