『スクールライフ・イズ・ノットグッド』
ノリ・ケンゾウ
(『道化の華』太宰治)
オサムが学校を休み出してから、もう二週間が経っていた。とくに大きな怪我をしたのでも疾患にかかったわけでもなく、ただ体調不良という理由で学校を長く休んでいた。園ちゃんはもっと長い。一カ月も前から学校に来ていない。園ちゃんの絶望した顔が、オサムの頭の中から離れない。
『決闘の予言』
ノリ・ケンゾウ
(『逆行』太宰治)
馴染みのバー「シゲ」の常連が集まって行われる新年会で、オサムは予言を受ける。あなたは決闘をすることになると言われる。しかも勝ち目はほとんどない、というか、それは言葉を濁してあるだけで、つまり間違いなく負けるのだという。いやいや決闘って、そんな馬鹿な、西部劇じゃないんだから。
『未完』
ノリ・ケンゾウ
(『猿面冠者』太宰治)
さて、人々を唸らせるような大傑作というものを、オサムも書いてみたいと思っている。え? 何を書くのか? そんなもん、小説に決まっているだろう。
『光と泡』
小山ラム子
(『人魚姫』)
高校の図書室の受付に座っていたのは、姫歌が中学のときにもその場所にいた男子生徒だった。その男子生徒に声をかけられ姫歌は返事をしようとするのだが……。
『呼ぶ女』
中山喬章
(『オオカミ少年』)
佐倉香は引っ越しの見積りを日に何度も呼びつけ、鶏の鶏冠で出来たサプリメントを段ボール箱二十箱分も注文したりする。学生マンションの管理人を務める「私」は佐倉香を気にかけるどころか彼女の奇行を楽しみにしていた。やがて佐倉香は自殺してしまうが「私」は反省するどころか、開き直ろうとする。
『なんともまぁ狭き世界で』
太田純平
(『如何なる星の下に』高見順)
私には伊藤真弓という女友達がいて、かれこれ十年来の仲である。とはいえ彼女には旦那も子供もいて、恋愛関係ではない。それに私は今、鈴木百合亜という職場の女性が気になっている。そんな中、真弓と浅草まで初詣に出掛けた私は、ある驚愕の光景を目の当たりにして――。
『あるく姿は』
間詰ちひろ
(『源氏物語』第九帖「葵」)
深夜になると、様子がおかしくなる祖母の六美。孫の夕奈は心配になり様子を伺う。過去の体験が祖母を苦しめ続けているのだが、その内容は夕奈の想像をはるかに絶するものだった。
『レイン・ゲート』
もりまりこ
(『羅生門』)
雨宿りしたからといって、その後何かが変わっているとは思わなかったが、篠原は彼女に会うことにも躊躇いを憶えていたのでだらだらと雨をしのぐことにした。隣にいた男が、<レインゲート地帯、雨やまず>というスマホの画面を見せながら囁いた。あなた、さっきなにかをくぐりませんでしたか、と。
『ミナコさんの思い出』
明里燈
(『人魚姫』)
美しいミナコさんが死んだ。人魚の心臓を食べると万病が治る、そんな伝説の残る島の漁師と結婚したミナコさんは、ある夏の日、泡のように私の前からいなくなってしまった。真夏という少女が語る夏と人魚とミナコさんの思い出。