外に元気よく飛び出せば、泡の様な雪がふあふあと沢山舞って来ている。
「ドカ雪だ!」
「ドカ雪だぁ!」
私はサッちゃんと叫びながら、足跡がない真っ新な雪原を走り出す。
そしてこんもりと積もっている白い絨毯に飛び込んだ。
「わー!」
「きゃぁー!」
二人で雪原にくっきり人形を残す。顔まで雪をくっつけてそのまま大笑い。
冷たいなんて気にしない。二人して雪のプールで一泳ぎしていた。
サッちゃんは近所に住んでいた女の子。同い年。元気でリンゴ頬の笑顔は未だに忘れられない。
今度は道の雪かきで脇に積まれた雪山に二人掛かりで穴を掘る。
きゃきゃしながらかまくら作るんだと意気込み笑顔で雪を掻きだしていた。
「おーい、固めてないから潰れるぞ~」
そう近くで言ったのは近所のおじさん。そんな事なんて気にしない。もう穴を掘る事自体が楽しくてしょうがないのだ。
子供二人が隠れる位に穴がなった頃合い、すると突然。
――ボスン!
雪山が潰れた。
「わーー!?」
おじさんの叫ぶ声を聞き近くで雪掻きしていた大人達がみんな集まった。大慌てで手で雪を掻き出す。
程なく私達の頭がぽっかりと崩れた雪山から出てくると。
サッちゃんと私は大笑いだ。
「がははははっ」
「きゃはははっ」
二人の笑い声の中で大人達は怒る気が失せて苦笑い。しょうがないと皆で大きなかまくらを作ってくれたんだった。
郷里が此処と言うわけじゃない。その頃にはもう父がいなかった。死別ではない事は覚えてる。
何の縁で越して来たのかは知らない。
妙に周囲がよそよそしかったのは多分、家族の事情だったんだろうと今は思う。
サッちゃんも似た様な境遇。彼女の父親や母親を見た事ない。それに近所の彼女に対する接し方が不自然に優しい。
それはきっと蔑むなんて出来ない不幸の生い立ちなんだと。
夕食まで時間はある。このまま宿部屋に居座る訳は特にない。
それともこのまま帰らずに出て行ったままでも構わない。
宿泊代は前払いしてる。迷惑は掛けない。
そんな事考えるなんて、本気なんだという自信も浮つく感じ。
手荷物も持たず、行く場所の見当もなく外出しようと決める。
出掛け際に女将さんが見送りをしてくれた。