小説

『かぐや姫は未確認生物が好き』渡辺鷹志(『竹取物語』)

「どうも自分には場違いだ。やっぱり来なきゃよかった」
 三神がため息をついたその瞬間、急にその場の雰囲気がパッと明るくなった。

 ドレスをまとった美月が現れたのだ。
 その場にいた全員が美月の美しさに息を呑む。
 美月が口を開く。
「本日はようこそお越しくださいました」
 一礼をして顔を上げると、5人を見る。
「これからみなさんと結婚するための条件を言います」
「条件?」
 その場にいる人の表情が引き締まる。
「みなさんにそれぞれ見つけてほしいものがあります」
「見つけてほしいもの……」
「私はそれらを見つけてくれた人と結婚します!」
「結婚」の言葉に三神を除く4人がうれしそうに歓声を上げる。

「私が見つけてほしいものは……」
 美月は1人ずつ自分のそばに呼んで、それぞれに見つけてほしいものを伝えた。それを聞いた5人はきょとんとした顔をしている。

「ツチノコ?」
「ネッシー?」
「カッパ?」
「ビッグフット?」
「イエティ……」
 それはいずれも、伝説や伝承はあるが、実際に存在するのかどうかもわからない生き物、未確認生物と呼ばれるものだった。

「今日から3か月以内にそれらを見つけてきて、3か月後にここで私に見せてください。直接連れてくるのは難しいでしょうから、動画を撮ってきてください」
 5人は「は?」といった顔をしている。
「見事に本物を見つけてきた人と私は結婚します。もし、2人以上いた場合は私が一番すごいと思った動画を撮ってきた人と結婚します」
 美月は相変わらずきょとんとしている5人の顔を見て微笑む。
「では、3か月後にお会いしましょう!」
 とだけ言って、すたすたとその場を去っていった。

「なんて条件だ」
「変わり者のお嬢様とは聞いていたが……」
「そんな生き物が本当にいるのか?」
「でも、あの巨大財閥の一人娘と結婚するにはやるしかない」
 三神以外の4人は、困惑しながらも美月に言われた生き物を探しに向かった。

 ツチノコはかつて日本でも大きな話題となった太くて短い形をした幻のヘビ。
 ネッシーはスコットランドのネス湖に生息するといわれる巨大生物。
 カッパは日本の民話にもしばしば登場する妖怪。

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