小説

『平成 牡丹燈籠』サクラギコウ(『怪談 牡丹燈籠』)

「ここここ断る!」
 それから勢いがついたのか
「新三郎ではない。し新二郎だ。一本足りない!」

 その時ドアをけ破るように菊輔が入ってくる。
「待て! まてまて待て!」
 化け物はイッヒッヒッヒッヒーッ・・・と笑いながら菊輔を見た。
「そそそいつより俺の方がずーっと噺は上手い。聞いちゃあくれねえか俺の牡丹燈籠!」
 新二郎の上の黒い化け物がにやりとしたかと思うと、すーっと消えていった。

 床の上にナナが気を失って倒れている。新二郎が駆け寄り抱き起こす。
「ナナ、ナナ!」
 ナナは新二郎の腕の中で薄く眼を開け言った。
「あ、1本足りない人」

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