うわあああああ。強くて明るすぎる光に、思わず顔を覆った指の隙間からきらきらこぼれる虹のような輝きに身をくねらせ、走る、走る。
走るうちにどんどん体があたたかくなる、すべてが軽くなる、何かを脱ぎ捨てたように、頭を覆っていた重たい何かが剥がれ落ちたかのように、目の前が急に開けたかのように明るく感じる。
はっはっはっ、息を弾ませからだじゅうめぐる血液を感じながら日和は叫び出したくなった。
信じられないよ、新のことばひとつでこんなふうになるなんて。
ほんの数分前まで、こんなことが起こるなんて思っていなかった。
不思議なんだよね、とつぶやきながら中道日和は窓から身を乗り出して廊下を見ている。
「何が?」
水野梨花は日和の背中にのしかかるようにして日和が見ているものを見ようとした。
「あれ、古川新」
「うん」
「新がどうかした?」
「あたし、新と小学校から一緒なんだ」
「あら?もしかして幼馴染ってやつ?」
「違う」
前のめりだった背中をしゅいと戻したせいでのしかかっていた梨花は「おうっ」と変な声を出しつつ体勢を整えた。
「急に起き上がらないでよ」
「梨花が甘い声で『幼馴染』とか言うからだよ」
「だって小学校から一緒って、幼馴染ってことじゃない?」
「甘い声で言うようなことじゃないから。幼馴染、というよりただの知り合い、全然仲良くなかったし、ただ顔と名前を認識していたってだけ。それだけ」
「へー」
「……なに、その声」
「いや、古川君って昔はどんな感じだったのかなあと思って」