小説

『生まれたままの姿』多田正太郎(『北風と太陽』『オンドリと風』『風の又三郎』)

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北風と太陽・・。
風なぁ。 何だよ?
良かった、ってな。
ほー、良かっただと? 
ああ、よかった。何でだよ?
風だからさ。風だから?
そう、風だから。
全然分からん。そうだよな。
だろ。だから、風なのさ。
だから、風なのさ、だと? そう。
ますます、分からん。
見えるか、生まれたままの姿が、よ。
見えるか? そうよ、風の、それがよ。
風の、生まれたままの姿、見えるか、だとー。
ああ、見えるか? うーん、風のなぁ。
見たか? 見えん! だろ。
ああ、生まれたままの姿なんか!
そんなの、見えるものかよ。
そう、風だからさ。

♪どっどど どどうど どどうど どどう、どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいくゎりんもふきとばせ

おいおい、一気に、そこに行く?
風の又三郎か、よ。
何だよ、一気も何も、お前だろ。
俺! 俺が? そうよ、寝ぼけか、とぼけか?
これ、耳にしたくないな!
耳にしたくないって。
ああ、不安になる、なんかよ。
不安だとー? お前がぁ? ああ。
へー、そんな感じなのかぁ。ああ。
この、♪どっどど どどうど・・。
これ、風の音かよ、まったく! 風の音か?
ほら、ヒュー、ヒュー、とかよ。
ピュー、ピューとか、そんな感じだろ。
そうか、確かになぁ。だろ。
♪どっどど どどうど・・。

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