小説

『夢をみる』モエコオオツカ(『胡蝶の夢』)

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 最近、よく同じ夢をみる。

「もう八時よ。いい加減起きなさい。遅刻するわよ。」
 下から私を起こす声が聞こえる。もそもそと体を起こし、ぼんやりと目線の先にあるものを眺める。いつの頃からか私は布団の中で夢を思い出すのが習慣になっていた。全てを鮮明には思い出せない。でもポツン、ポツンと思い出せた冒険の切れ端をつなぎ合わせていくあの感覚が私はたまらなく好きだ。
「何ぼんやりしてるの?」
 文字通りぼんやりと食卓に着いた私は矢継ぎ早に問い詰められる。
「最近、よく同じ夢みるんだよね」
「どんな?」
 さして興味もなさそうな返事だが私は一応説明する。
「何かわからないけど、大きなものに追いかけられてて逃げたいのに、上手く走れないの。で、やばい、捕まるってところで自分は飛べることに気が付くわけ」
「空飛んじゃうんだ」
「そう。ピューって。自分の下にはたぶんあれ知らない町、でも町が広がってて、人間が砂粒くらいの大きさに見えるの」
 夢って人に語るとつまらないものになっちゃうんだな、なんて思いながら私はぼんやりと朝食を口にした。
「ハイハイ、おめでとう。私パートの時間だからもう行くからね。ゴミ捨てといてね」
「えーっ嫌だよ。あそこカラス多いんだもん。」
 忙しそうに家事をこなしながら出かける準備をしている背中に向かって私は最大限の不満をぶつける。最近あのごみ置き場はカラスが出始めた。他の地区のごみ置き場が改修されてきれいになったものだから未だに緑のネットをかけただけの私の地区のごみ置き場はカラスにとって最高の食料調達場なのだろう。今までカラスなんていなかったのに工事が済んでないのがうちだけになると、どこからともなくやってきたのだ。最初はカラスって頭いいな、なんて思ってたけどなんか黒いし嘴とがってるし襲われそうで怖い。それに無法地帯化してて他のところからごみを捨てに来る人がいて朝は人が多い。
「いいでしょ通り道なんだから!いってきます!」

 
「おはよう!どこ行くの!」

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