小説

『MP0でも使える魔法』にぽっくめいきんぐ(『シンデレラ』)

 シンデレラを助けたフェアリー・ゴッドマザー。
 彼女の魔法は、MP(マジック・ポイント)制だった。
「行ってくるわ! ありがとう」
「魔法は0時には解けるから、気をつけるんだよ」
 かぼちゃの馬車を見送った、魔法使いのフェアリー・ゴッドマザーは、次の「かわいそうな頑張り屋」の所へと向かった。
 とはいえ、シンデレラの件で、結構な量のMP(マジック・ポイント)を消費してしまった。物を変化させる魔法は、消費が激しい。
「今日はあと、何人助けられるかしらねぇ……」
 『普通の』馬車の座席から、ゴッドマザーのため息が白い煙となって、馬車の窓越しに寒空を一瞬染めた。転移の魔法や、空飛ぶほうきを出す魔法は、可能な限り使わずに済ませる。頑張り屋たちの為に、温存したい。

 馬車は、小高い丘へとさしかかった。
 丘の上には年代物の風車がそびえており、沈み行く夕陽が、長い影をその根本から延ばしていた。風車の下には、粗末な服を着た少年が、しょんぼりと立っていた。
 小柄な子だが、目鼻だちはしっかりしていて、立派な眉が少年本来の意志の強さを匂わせていたが、今はその眉も力なく垂れ下がっていた。
「ぼうや、どうしたんだい?」
 ゴッドマザーは馬車を降りて少年に近づき、魔法使いのフ-ドを上げて顔を出してから、声をかけた。
「ここで、リゼを待っているんだけど……来ないのかな」
「待ち合わせなんだね?」
 ゴッドマザーは詳しく話を聞いた。奉公先からわずかばかりのお給金を貰ったので、その金で花を買い、リゼという少女に愛の告白をしようと、呼び出したらしい。確かに、少年が後ろ手に持っていたのは、赤いバラだった。花言葉は「あなたを愛しています」。
 しかし、約束の時間を過ぎてもリゼは現れない。
「リゼはこの街の地主の娘だし、僕なんかじゃ釣り合わないのは分かってる。でも僕は男だ。せめて、この想いだけは伝えたかったんだけど……」

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