「現状製造工場すら特定できない自白剤が大量にどこかに存在してるということがわかり、上層部は大慌て、賄賂を受け取った手前それを公表もできず、署内の捜査官総動員でこれを解決せよと命令が下ったってわけさ。今街中で警察の情報屋としてマークされてる奴らを片っ端から絞り上げて多不幸剤の出所をつかんでるところだ。そこで目をつけられた一人がお喋りロビンってわけだ。これでわかったか? あんたの事件に俺は噛みつかない。その必要がないってことだ。なんなら上に聞いてみればいい。あんたら鑑識の捜査員には伝わってない情報だろうが上に問い合わせれば事実だとわかるだろうよ」
以上だ。と切り上げて現場を後にするマック。
アパートメントを出て、外に駐車した持ち主同様に古びたガソリン車に乗り込む。
と同時に後部座席のドアが開いた。
驚き振り返るマックの目に、後部座席にキューブリックの持つ操作端末ロボットが放り込まれて鎮座していた。
次いで開かれる助手席のドア。
乗り込もうとするキューブリックにマックは声を上げる。
「なんでついてくるんだよ! 長々と説明してやっただろ! 俺の追いかけてる事件はおまえさんの事件とは無関係だって! それともまだ疑ってるのか!」
声を荒げるマックに対して平然と答えるキューブリック。
「貴方が言ったことです。今分かっているのは、エド・フランクリンの銃であの部屋があの状態になったということだけだってね。だったらその捜査に追従するのは至極当然のことなのでは?」
それに、とキューブリックはシニカルに笑う。
「僕、こんな仕事をしていますが、人を疑うのは嫌いなんですよ。特に同僚はね。だから示して下さい。証拠を。そうすれば納得もしましょう。貴方と僕の事件が無関係だって。ついでに事件の解決もできそうだ」
マックは口をあんぐりと開いたのち、今日一番の溜息をつく。
「あぁ、もう! 勝手にしろよ!」
マックの諦めとともに発進するガソリン車。
証拠を追い求める男と
情報を追い求める男の
捜査が始まる。