日の出と同時に目覚めた私は、ウェットスーツを着てサーフボードを持ち、海へと出る。波に乗ったり浜辺に座り込んだりしながら数時間を過ごした後、アパートでシャワーを浴びて、最寄りの駅前にあるカフェで昼食をとりながら仕事をする。週に三回は渋谷にあるオフィスに出向いて必要な打ち合わせをするが、それもサーフィンをした後のことだ。そうして日が暮れるまで過ごしてからアパートに戻り、簡単なつまみを作って酒を飲みながら、時に本を読み、時になにもしないまま思い出にひたる。若いころは、フルタイムの仕事をして時間がないながらも、無理やり時間をつくってサーフィンをしに行ったな、と私は回想する。あの時は、周りに私と同じような過ごし方をする仲間たちがいて、一緒に予定を合わせながら海に繰り出したものだ。あれが遊びだったとするならば、今は単純な趣味として波に乗っているのだろう。誰かと一緒に行動するわけでもなく、新たな波場を探すわけではなく、同じところで過去を反復するばかりの、思考のない時間の過ごし方……。
この土地にやってきたはじめの頃は、新鮮さも懐かしさもあったが、一週間も過ぎればすべて慣性のなかに飲み込まれていった。しかし同じ毎日を過ごすうちに、私と同じような生活をする人がほかにもいることに気がついてきた。朝、私が海にやってくるのに前後して、一組の男女が現れる。どちらもまだ二十代と思える若々しい雰囲気で、男は細い体つきだが筋肉質で、私が着ているのに似たウェットスーツに身を包んでいる。女は対照的に背が低く、少し厚手のフルスーツを着込んでいる。一見するとスポーツとは無縁であるような体系をした女性だが、波に乗るのに苦労しているようすはなく、男とともに笑いながら海に入り、水の上でサインを送り合っている。
基本的に私とは無縁である二人だが、泳いでいて視線が合うとにっこりと微笑みかけてくるし、陸で近くにいると声をかけてくることもある。
「調子はどうでしょう?」と男が親しげに尋ねてくる。
「今日はダメです。いつもより波が高い」と、私は苦笑気味に返事をする。
「すぐに慣れますよ。一度乗ってしまえば、あとは何も変わりません」
男が「ほら」といって指をさす方を見ると、女がひときわ高い波に乗り上がるところだった。彼女は両手を前後に広げて前かがみの姿勢をとりながら、端から落ちていく波の流れから逃げるようにボードを滑らせている。男が手を振ると、彼女も片手だけを小さく揺らして応え、やがて波にのまれていく。岸のほうまで半ば流されてから水面に見せた表情は、男に向けられる満面の笑顔だった。
彼らは私よりも長い時間を海で過ごすことが多い。一度、昼前にやることを持て余して散歩をしたとき、彼らが引き上げるところを見たことがある。彼らは防波林の横にある大通りをわたったところに黒のレクサスを止めていて、体についた砂を落として上着を着てから車に乗った。そして大通りとは別の、最寄りの駅がある内陸側のほうに去っていくのだった。
この街にやってきて一ヶ月も経つころ、私は新たなサーフィン仲間である二人から昼食に誘われた。