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『とあるホテルのラウンジで』長尾優作

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 その夜、ホテルに連絡があり、息子は彼女と電話で話し、彼女の『お手伝い兼運転手(脚本家志望)』としてアルバイトで雇ってもらうことになった。
 早瀬麻衣という女性の仕事は不明だが、そういった映像業界に関わっていることは確かだろう。息子の書いた脚本はどうだったのか気になる所だ。

 言葉が相手の心を動かし、心が変われば行動も変わってゆく。

 彼女の言葉が響いたのか、息子は何度も嬉しそうにこの話をしてくれる。
 どこか人生論に通ずるものを感じ、私にも深く影響を与えた。
 こうして新しい場所を訪れたおかげで、再び若い頃の創作意欲が戻ってきたようだ。今となっては苦い思い出だが、私も若き頃は――失敗の続く時間を噛み締めていた。
 これまで私は作家として、三十数年もの間、多くの物語や詩を世に送り出してきたが、五年前に発症した腰痛せいか、布団の上に寝転ぶ時間が多くなり、満足したものを書けずにいた。東京にいる息子が私を心配し、このホテルの温泉が腰痛に効くと、なけなしの貯金をはたいて招待してくれたのだ。
 京都で再会することは何かの運命だったのではと思いつつ、家族のありがたみに直に触れたときでもあった。
 とあるホテルのラウンジで、このような縁のつながる物語を書けるとは思ってもいなかった。人と人とのつながりが、巡り巡って自分と家族の人生をも豊かにしてくれたのである。

 気がつけば雨がやみ、窓から満月が顔を出していた。
 今宵も贅沢なこの空間で、心地よい夢を見られることを願って、
 ここらでペンを置くことにする――。

令和元年 十一月三十日(土曜日)
橋田光彦

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