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『とあるホテルのラウンジで』長尾優作

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 アイデアが行き詰ったときは場所を変えるといいと聞くが、この話を思い返すと、あながちそれも間違いではないような気もしてくる。
 長いようで短かった人生の中で、これほど心おきなく『執筆』を楽しむことができたのは何年ぶりだろう。どうすれば読者の心に残る物語を書けるのか――そればかりを考え続けた人生だった。
 ここ数年ばかり満足する物語を書けておらず、自信を失いつつあった。
 日々起きる偶然の『出会い』や《運命》とも呼べる不思議なご縁に目を向けることもできていなかったのである。
 今夜、泊まる一室に置いてあったメモ用紙に今日の出来事を残しておく。これをどこの誰に見せようというわけではないが、旅の記録になればと思い、このままペンを走らせてみようと思っている。

 とあるホテルのラウンジで、このような小さな出会いがあったのだ――。

*

「まだ二人は来てませんか? 今日このホテルに予約している橋田光彦と好恵です。ええ、はい。僕の父と母なんです」
 話の始まりは、十一月三十日の午後一時を過ぎた頃。脚本家を目指す男が、京都駅からバスで十五分程の距離にある宿泊施設へ訪れたことがきっかけだった。ホテルの名は漢字二文字で『楽縁/RAKUEN』――。
 今年の二〇一九年、春にオープンした新しいビジネスホテルである。
「橋田聡と申します。『聡』と書いて『さとる』と読みます。両親が来たら教えてください」
 聡はズレた眼鏡をかけ直し、『合格祈願』と赤文字で刻まれた愛用の鉛筆をリュックから取り出して受付の女性スタッフが出した紙に名前を書いた。
「あ、そうだ。ペンネームの『橋田寿賀男』でもいいですか?」
「いえ、本名でお願いします」
 真面目そうな女性スタッフに言われ、聡は口をひん曲げた。
「でも、橋田寿賀男って筆名は、個人的にすごく気に入っているんですよ」
「本名でお願いします」
 聡は渋々、本名を書くとロビー周辺をぐるりと見渡した。
「いいホテルですね。天井と壁のライトが、なんていうか……ピカピカだ」
「ありがとうございます。当館は皆様にくつろいで頂けるよう最新の――」
「どこか執筆できる場所あります?」
 聡は唐突に訊ねた。
「執筆……ですか?」
「ええ、脚本を少し修正したいので。あ、僕の名前覚えておいてくださいよ。いずれは有名な『脚本家』になる男ですからね、ふふふ……」
 女性スタッフは困り顔で対応し、『ラウンジ』の場所を案内した。
 ロビーの奥に、緑豊かな観葉植物で囲まれたラウンジがあった。館内には心癒されるようなクラシック音楽が流れている。

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