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『ReverbTOKYO』柿沼雅美

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 コロンちゃーんと手を伸ばすと、コロンは私の手の甲をペロペロとあいさつ程度に舐めて床に着地し、定位置なのかダイニングテーブルの下に放られているクッションの上に寝そべった。
 「もう眠いみたい」
 「かわいいねぇ。吠えたりしないいい子だね。ずっと飼ってた?」
 梨沙はまたソファに座った。私が紅茶を飲みながら聞くと、ううん、と首を振った。
 「最近なの。まだ半年かな。婚活ですごい嫌なやつに会って、もうイライラしちゃって、犬でも飼いたいって言って、買ってもらっちゃった」
 まじか、と私は小声で返す。経緯がすごいな、と思う。
 「そんなことよりさぁ! どうしたの今日は。だいたい珍しいじゃん七菜香がグループトークに書き込むなんて。びっくりしたよ。家族と喧嘩でもしたの? すっごい仲がいいって思ってたけど」
 あー、だよね、と思いながら紅茶をすする。私も、両親とはびっくりするくらい仲が良くて、社会人になっても家を出る理由がひとつも見当たらないくらい居心地が良かった。
 「それがね、恥ずかしい、お恥ずかしい話なんですが」
 うんうん、と梨沙が目を輝かせて言う。そうだ、この子は人の残念な話が大好物なのだ。いやしかし泊まらせてもらうのに背に腹は代えられない。
 「お恥ずかしい話なのですが、追い出されまして父親に」
 それでそれで、と梨沙がたたみかける。
 「それがですね、ほら私もう35歳になったじゃないですか」
 「同い年だからね、同級生だからね、私もだよ」
 「ですよね、うん、それで。父が言うには、35にもなってずっと実家で母親におんぶにだっこで掃除洗濯してもらって恥ずかしくないのかと」
 えー、と梨沙が言う。梨沙はきっとそんなこと言われないのだろう。
 「仕事はしてるにしても派遣だし、結婚もしないし、弟のお嫁さんとは仲良くできないし。1回くらい自分で生活してみたらどうだって」
 「えー七菜香のパパ厳しいね」
 「んー、でも当たり前なことも自分で出来てなくて四捨五入したら40歳じゃん? さすがに自分でもやばいなって思ってはいるんだけど」
 「えーそうかなー。家が居心地よかったらいいと思うし、なんなら七菜香もがっつり婚活して週末ごとにいろんな男とデートみたいのしてみたらいいのに」
 「えぇー、無理だよー。だってそもそも好きじゃないとデートできなくない?」
 「そんなことないよ! 食事も予約してくれるしお金も出してくれるし、車で迎えに来てもらってもいいし、ディズニー行ってもいいし今ならイルミネーション一緒に行けるじゃん?」
 「えーまだ付き合ってないのに?」
 「あとで付き合うんだよ!」
 それで付き合ったっけ? と梨沙に言いかけてやめる。ちがう今はそんな話じゃない。
 「うーん。で、それでね、一応キャリーバッグに数日分の着替えとか入れて来たわけですよ。父親は一人で物件でも探して契約して帰って来いって言うわけですよ」

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