メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『繋ぐ』平伊志七

  • 応募要項
  • 応募規定

 ストップウォッチで計れば同じだとしても、体感がそもそも違う。同じ五分だとしても。
「せっかくだから、さっそく頂きましょうか、これ」
 お土産のプリンを箱から取り出して、机の上に3つ並べたおばあちゃんは、キッチンに向かった。
「おじいさんはコーヒーでいいわね。で、しょうちゃんはジュース・・・・・・」
「私もコーヒーにして」
 え。見るからに、「え」と驚いた顔が二つ。おじいちゃんと、おばあちゃんは似たような顔をして私を見た。
 コーヒーなら、本当は高校生の頃からブラックで飲めた。でも、おじいちゃんとおばあちゃんちでは、孫にはジュースが出されるものと決まっていた。だから今日という今日まで、「しょうちゃんはジュース」という、いつまでも子ども扱いを甘んじて受け入れてきたのだけれど、大学生にもなったし、初めてできた彼氏とも別れたし、ほろ苦いコーヒーを堂々と飲めるにふさわしい人間になったような気がして、ついコーヒーを所望してしまった。
「コーヒーでいいの?」
「うん。ブラックがいい」
「しかもブラックか。わしなんか砂糖三つにミルクが必須だぞ」
 想像しただけで甘ったるい。今までおじいちゃんのコーヒー事情に注目したことなかったけれど、改めて聞くと、「コーヒーは大人の飲み物」って言うには、そのカスタムは少々お子様舌なのでは、と思ってしまう。
 おじいちゃんなのに、子ども。やっぱり私は少し大人になったんだろう。小さいときは、おじいちゃんはおじいちゃん以外の何者でも無く、おじいちゃんやおばあちゃんに「子どもじみた一面」が潜んでいるなんて想像したこともなかった。
 おじいちゃんの甘そうなコーヒーと、ミルクだけ入れたまろやかそうなおばあちゃんのコーヒーと、ブラックコーヒーの私。
 机の上に三者三様のコーヒー。コーヒーだけ見ていると、私が一番クールだな。と、声には出さずに思っておく。
「そんなにコーヒーが好きだったの。ニコニコしちゃって」
 おばあちゃんに指摘された無意識の笑みを苦笑いに変える。コーヒーが好きだからニコニコしていたというわけではないけれど、私が一番クール、なんてしょうもないことを考えていたことを馬鹿正直に言ったら、それこそ「子どもねえ」と笑われてしまいそうだから、おばあちゃんの勘違いは訂正せずにおいた。
「うまいなあ、これ」
 一人さっさとプリンを食べ始めていたおじいちゃんが、満足げに一言。そう言ってもらえると並んで買ってきたかいがあるというものだ。
「あらやだ、本当。さすが東京ねえ」
 そう言って、おばあちゃんもパクリ。買ってきた私もまだ味は知らないので、期待しながら口へと運ぶ。うん、美味しい。ちょっと高かったけど、これなら納得の味だ。
「ひそかに評判だったから、気になってたけど、これはアタリだね」
「ひそかに、なのに、どうしてしょうちゃんは知っているの。東京の人でもないのに。東京のお友だちにでも教えてもらったの?」

2/8
前のページ / 次のページ

11月期優秀作品一覧
HOME

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5 6 7 8
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー