「謝るのはこっちだ。君がそんなに抱え込んでいたことは知らなかった。君が辞めるのはすごく残念に思う。そして、相談をできないような空気を出していた僕自身にも残念に思う。それでだな……最後に君にお願いしたい仕事があるんだが」
「な、なんでしょう」
「いやあ、とても言いづらいのだが……私の身代わりになってくれないかな」
「え?」
「実は今日家族三人で来たんだが、油断していて私だけ捕まってしまってな。アプリのクイズもなかなか解けんくて。娘が 8 歳なんだが、未成年だから 10 時までしか参加できんのだ。休日ぐらい少しでも一緒にいてやりたくて。駄目かな……」
私は、糸井さんから頼まれる最後のお仕事だと承諾した。
糸井さんは本当にありがとうと頭を下げたので、「こちらこそ今までお世話になりました!」と頭を下げた。糸井さんと入れ替わって店内に入ると、
「あれえ? 捕まったのお?」
と、目を丸くした英さんが座っていて、一緒に美味しい血の赤ワインと内臓スパゲッティをいただいた。
しばらくして、私服に戻った多田と潤子さんも来て結局四人で朝までそこで明かす方向になった。
「しばらくうちで働かない? 次の仕事見つかるまでで良いし。今、人手不足なのよ」 と、潤子さんは頬を赤くして言った。私は私を抱きしめてくれたこの人に何か貢献したいと、酩酊の中はっきりと頷いた。働くとは一体どういうことなんだろうかという疑問はこれからの私に託す。ピンクラビットに「すいません。もう一杯」と血のワインを注文した。