海斗の姿があるのではないかと目を凝らし、そう呟いたその時-
大きな赤い大漁旗を振る少年の姿があった。頭に白いタオルを巻いた少年。
そう、海斗だった-
翔太は海斗に向けて大きく手を振った。それに気付いた海斗が手を振り返す。その瞬間、まるで時が止まったように二人の目が合った。そこには悲しみの感情などなく、お互いに満面の笑みを浮かべていた。
電車の速度が少しずつ上がる。徐々に小さくなる海斗の姿。そして、やがてその姿は見えなくなった。
「また、会えるさ、きっと」
雄太が翔太の頭を撫でた。
「父さん」
「ん?」
「僕、中学生になっても大丈夫だからね。安心して」
「ああ、分かってるさ」
翔太は太陽に照らされ、きらきらと輝く海をしっかりとその目に焼き付けた。