私たち五人は、大学が一緒だったってことにしてるから、となおさんに言われ、面食らった。未来、千鶴、宏美さん、なおさんの四人は同じ東京の大学を出ているから、私もそのふりをしないといけないわけだ。東京なんて行ったことないのに。
「大丈夫、うちの大学、農学部もあったから」
ばれないばれない、と笑っているけど、心配してるのはそこじゃない。
「小牧も同じテニスサークルってことにすればいいよね?」
テニスサークル? 未来と千鶴ってテニスサークル入ってたの?
そうやって細かな打ち合わせをしながら会場である近くの居酒屋まで歩いて行く。最後に宏美さんが「あ!」と何かを思い出したように付け加えた。
「仕事は本当の話をすればいいよ。農家さんなんだよね?」
じゃ、打ち合わせ通りによろしく。
宏美さんがまとめた時、五人の男性がこちらに近寄ってくるのが見えた。
相手の男性は、宏美さんのお兄さんの知り合いだと聞いていた。お兄さんの年齢は聞いていないが、男性陣は二、三歳上に見えた。自己紹介を軽く終えると、早速男性の方から話題を振ってきた。
「みんな、仕事は何してるの?」
そう言う俺は美容師やってて、と話始めた男は髪を青く染めて、ちょっといかつい感じ。教員が二人、ネット関連の会社に勤務するという人が一人。私とは反対側の端に座っていた無表情な男が「自営業」と答えていた。
この無表情な人、無理。いかつい顔も苦手だけど、この無表情な男と席が離れていてよかった。そんなことを思っている私も、たぶん男性陣から「無理」と思われている。さっきから俯いたままでしか話すことができない。自分が場違いだという考えが頭から離れなくて、ぼそぼそと目立たないように話すことしかできない。
「君は何の仕事しているの?」
目の前の男にそう顔をのぞき込まれて、みんな自分の話を終えたことに気がついた。
「あ、私は、その……」
急に話を振られて戸惑ったこともあるし、自分の仕事を話すことにも抵抗があった。その一瞬の迷いの間に、未来が割り込んできた。
「小牧の家は農家さんで、小牧もその手伝いしてるんですよ」
きっと私を助けたつもりなんだろう。その答えに男性陣も「へえ」と相槌を打ち、「家業の手伝いってすごい」「農業ってかなり体力使うんじゃない」と興味を持っているようだ。これは意外と好印象だ、とちょっとだけ気分が明るくなったのはつかの間だった。
「モモ農家さんなんですよ。モモ農家の桃ちゃん」
そう言って離れた席でくすくすと笑いながら言ったのは宏美さん。隣のなおさんもけらけら笑って「なのに、モモが嫌いだから食べないって、面白すぎる」と続けている。それにつられたように男性陣も笑い始め「いや、かわいいね、その発想」とテーブルが笑いに包まれた。