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『ホテルAI』渡辺鷹志

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「いらっしゃいませ!」
 男性は叫び声のような大きな声であいさつをすると、うやうやしく頭を下げる。その様子もとても仰々しい、というよりはっきりいって少し異様だ。
「私はこのホテルのオーナーです」
 オーナー? この変わり者というか、あやしい雰囲気の人物が。
「ようこそいらっしゃいました。ささ、お疲れでしょう、どうぞフロントへ」
 オーナーは俺の反応など全く気にせずに話しかけてくる。
 オーナーに案内されてフロントに行き、簡単なチェックインの受付をする。
 その間もオーナーは、
「いや~、今日はいい天気ですね」
「あの地域からいらっしゃったんですか。私も若い頃に行ったことがあります。いいところですよねえ」
「今回はどういったご用件でこちらへ? 出張ですか。大変ですね、連休中に」
 次から次へと話しかけてくる。長旅と仕事で疲れていた自分にとっては正直かなりうっとうしかった。しかし、相変わらずこっちの反応などお構いなしに次から次へと話しかけてくる。
 聞いているこっちが疲れてくる。とにかく話を打ち切らないと。
「ところで、ここはホテルAIとのことですが、ホームページのサイトもないようですし、どういったところがAIなんですか?」
 こっちから質問をした。ちょうど気になっていたことでもある。
「は?」
 オーナーがきょとんとした顔をしている。おいおい、なんでそんな表情をするんだ。
「いや、AIというので、何かこう最新式の設備とかがあるのかなと思って……」
 オーナーはそのインパクトのある顔に満面の笑みを浮かべてうなずく。
「なるほど、そういうことですか」
 すると、またうやうやしく礼をしてからこっちを見て、堂々と宣言する。
「ホテルAIは、ホテルAI(エーアイ)ではなくて、ホテルAI(愛)と読みます」
「は?」
 今度はこっちが驚くというかあきれる。こいつは何を言っているんだ。AIは愛と読むなんてダジャレに付き合えっていうのか。
「AIは愛です。当ホテルは日本一、いや世界一愛のあるホテルを目指しています」
 またもや大声で堂々と宣言する。その言葉を聞いて、ホテルの他の従業員もうなずいて、感動しているのか、拍手をしている。どうなっているんだ、このホテルは。
「お客様の滞在中も愛を持って接したいと思います。ご安心ください」
 何がご安心だ。まずいところに来てしまったなあ。俺は悪い予感がした。そして、この予感は見事に当たることになる。

 次の日、朝食を取っていると、俺を見つけたオーナーが近づいてくる。うわー、こっちに来たよ。朝食ぐらい静かに食べさせてくれよ。

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