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『ホテル・ソスペーゾ』岡田麻央

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 買ってホテルに戻るわけにもいかない。
 なんとなく見に来てしまったが、よくよく考えればここでやることなどない。
 一応、観光とはいえないまでも商店街の様子を見れたのでよしとするか、と思った矢先、店の奥から出てきた腰の曲がったおばあさんに声を掛けられてしまった。

「あんた、旅の人かね?」

「ええ、まあ」

 旅の人。古風な言い方だ。少し、面白いと思ってしまった。

「これ食べるかね?」
「これ?」
「この魚」
「それはまあ、食べたいのは山々ですけど……」

 旅の人なのでホテルに持って帰るわけにも行きませんし、そもそも捌けません。などと言い訳を並べる前に、

「ほれ」

 いきなり、袋に入れられ、魚を渡された。

「あっちで捌いてくれるからね」
「あっち?」
「あっち」

 指された方を見る。商店街のアーケードが見える。

「あっちにね、定食屋あるから」
「定食屋?」
「そこにこれ持っていけばいいからね」

 なるほど。そういうシステムなのかと俺は感心しつつ、お昼はそこにする事に決めた。
 申し訳ないくらいに安い金を払い、礼を言って店を出ると、おばちゃんは道を間違わないようにと、ずっと俺の背中を見ているようだった。
 普段なら、子供じゃないんだから。と思う。でも旅先でこんなに気を遣われると、心強い。
 一人じゃないと思える。
 足取りが軽くなり、ぐんぐん目的地へと進める。
 実際、定食屋はかなり近くてあっという間だった。

「いらっしゃい」
「あの……この魚、そこで買ったものなんですけど……」

 気難しそうな大将に少々萎縮してしまうが、そこは流石の職人。すぐさま意図を読み取ってくれたお蔭で、あっという間に海鮮丼が目の前に現れた。
 それを食べた。

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