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お客さんたちを見送っていると深津夫妻がやって来たので、原田から声をかけた。
「ご宿泊頂き、ありがとうございました」
「こちらこそ、お世話になりました」
二人揃って、笑顔で同じことを言った。さすが夫婦。
「楽しかったわ。またよろしくお願いします」
深津夫人がそう言うと夫の方も大きく頷いて口を開いた。
「それじゃあ、また」
「ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ちしております。いってらっしゃいませ」
原田は深々と一礼をし、頭を上げると奇声が響き、目の前で昨日の男の子がすっ転んだ。
男の子を抱き上げる原田。
「痛いの痛いの飛んでいけー」
今日もウルサイ日々が始まる。