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『ウルサイところ』室市雅則

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 原田は予約票を確認する。大人二名で一泊での予約である。
「お手数ですが、こちらにお名前、ご住所、お電話番号をご記載頂けますでしょうか?」
 すると妻の深津夫人が宿泊名簿を書きながら、原田にこう尋ねた。
「賑やかなホテルですね」
 もしかして、この夫婦はここが『ウルサイホテル』であることを知らずに予約をしてしまったのではないかと原田は考えた。それを尋ねて良いものかどうか、思考が駆け巡る。
「あの、深津様。お一つお尋ねしてよろしいでしょうか?」
 名簿を書き終えた深津夫人が顔を上げた。
「はい、どうぞ」
「こちらのホテルは『ウルサイホテル』と申します。その、何と申しましょうか。一般的なホテルと異なって、少々『ウルサイ』環境と申しますか……」
 原田が言い終わる前に『ぎゃー!』という叫び声がキッズブロックの方から響いた。
 深津氏が笑って返事をした。
「大丈夫ですよ。理解していますから、ご心配なく」
「……失礼致しました。こちらカード式のルームキーでございます。深津様のお部屋は301号室ですので、あちらのエレベータでお上り下さい」
「ありがとう」
 深津夫人がにっこりとルームキーを受け取って、二人はエレベータに向かった。
 このホテルに勤務を始めて半年ほどだが、原田は初めて子供を連れていないお客さんと出会った。
 多くの場合、ホテルでの宿泊は快適な環境を求めていると思うが、わざわざ『ウルサイホテル』を選ぶ深津夫婦が不思議であった。
 先輩の佐々木に尋ねると、これまで間違えて予約してしまったお客さんはいたが、理解してやって来たお客さんは初めてだと言う。
 世間は広いので、こんな場合もあるだろうと思うけれど、何か目的があるのではと穿ってしまうのは悪いことだろうか。
 例えば、『ウルサイにもほどがある!』なんてクレームを入れられたり、それこそ子供を拐かしたりなんて、ネガティブな想像が思い浮かんでしまう。

 しばらくすると深津夫妻がフロントにやって来た。
 もしや早速かと原田は少し構えた。
「本当に『ウルサイホテル』なんですね」
 深津氏が言った。
 悪い予感は的中か。
「申し訳ございません」
「いえ、それが良いんですよ」
 原田はどう返事をして良いものか分からなかった。

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