困惑しながら顔を上げると、夫がじっと私の顔をのぞき込んでいる。まるで、子供が母親を見るような顔、不安そうな顔。どこか悲しそうな顔。目が合ったことに気付いた夫は目線をぷいっと外したが、そんな夫を見たら急に胸が熱くなった。 あっ、今の顔、初めて私をデートに誘った時とおんなじ顔だ。その事に気付いた時、私の手が自然とケーキに向かった。そして口に入れてみた。やっぱり酸っぱくて苦手だった。 でも、何だかもう少しだけこの人と食事を続けてもいいかな。そう思えてきた。 4/4 前のページ 8期優秀作品一覧 HOME