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『雨の日に』真銅ひろし

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「いいなぁ、俺もデートしたいな。」
「奥さんとすればいいじゃないですか。」
 佐伯さんは無邪気に言ってくる。
 デートなんて出来るわけがない、きっと無言で終わってしまう。
「そうだね。」
 苦笑とともに内心暗くなった。
「ちょっとやめてよ~。」
 客席からはしゃぐ声が聞こえる。目線を移すと20代位の若いカップルがスマートフォンの画面を一緒に見て楽しげに話している。何を見ているのか分からないが二人だけの世界に入っているようだ。
 はしゃいでんじゃないよ。せいぜい楽しいのも数年だぞ、と心の中で毒づく。
「・・・。」
 離婚。
 ダメだ。気を抜くとその言葉が頭に浮かぶ。
 何故こんな事になってしまったのだろうか?たぶん始めの原因は私の浮気疑惑から始まったと思う。けれど実際にはしていない。連絡せずにお店のスタッフと朝まで飲んでいたのが何度かあった。それが妻は気に入らなかったようだ。こちらにも落ち度があるのでその事に関しては謝ったが妻は納得しなかった。そしてそこから徐々に関係は悪化していった。今は家に帰ってもお互い全く口を聞こうとしない。
「はい。」
 冷たく言い放ち、テーブルに離婚届が出された。 妻が書く所はもう書かれていて、後は自分の所を埋めれば完成になっている。
「なにこれ。」
「離婚届。」
「・・・。」
「書いてくれれば私が出しておきます。」
「落ち着けよ。」
「落ち着いてます。考えての事なので。」
 なので。と言う言葉が妙に距離を感じた。
「ちょっと待て、どうしてこうなるのかよく分からない。」
「・・・。」
 妻は何も答えずにどこかに行こうとする。
「あのな、同意なんか出来ないよ。」
「・・・。」
 妻は温度がない表情でこちらを一瞥し自分の部屋へ行ってしまった。
「・・・。」
 さすがに離婚は飛ばしすぎだ。もともとは誤解だし、時間が解決してくれる事だってきっとある。
 それに娘はどうする?中学生になったばかりだ。多感な時期に離婚をしたらどんな影響を与えてしまうか分からない。非行にでも走ったらたまったものではない――――――。

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