○選んだ作品:
『ピンクの100円ライター』山名美穂(『マッチ売りの少女』)
○選んだ理由:
詳細な描写によって読者はおそらく3、40分ほどの作中時間に閉じ込められるのだが、それはとても心地よかった。悔しいと思うほどに上手さを感じた。また、〈コバヤシ、タバコ吸い過ぎだろう〉とこちらがツッコミたくなるシリアスな笑いもあって、おもしろかった。たくさんの人に読んでもらいたい。
ブックショートアワード2015年8月期の優秀賞受賞者の皆様に、ご自分以外の作品のなかで最も面白いと思った作品をアンケートで答えていただきしました!
(順不同 / ご返信いただいた方のみ記載)
○選んだ作品:
○選んだ理由:
詳細な描写によって読者はおそらく3、40分ほどの作中時間に閉じ込められるのだが、それはとても心地よかった。悔しいと思うほどに上手さを感じた。また、〈コバヤシ、タバコ吸い過ぎだろう〉とこちらがツッコミたくなるシリアスな笑いもあって、おもしろかった。たくさんの人に読んでもらいたい。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
物語の世界が確立されているから。文体や構成に無駄がなく、よくこの長さでこれだけのまとまりがある物語を書かれたなあ、と感心させられました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
流れるような口語体とオノマトペのバランスが絶妙で、頭の中で反芻するたびに染み込んでゆくリズミカルな文体が心地よかったです。四季を通して何かしら鞄に入っている様に生活感が出ているのに、次々と移り変わる描写がめくるめく夢のようで、まさに「綿」のごとくふわんふわんした世界に引き込まれてゆきました。
『綿四季』を音読すると「わたしき」となるから、随筆として書かれた『私記』なのだろうかと想像してしまいます。そうすると、この方は今日、どこで何をしているのだろうか、と微笑ましい夢想がひろがってゆき、何度何度も読み返しました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
「勘弁も何も感謝の気持ちしかない」と言ってくれる神様も、お爺さんをすぐに信じちゃう長者も、正直だけど隠れ疫病神になっちゃったお爺さんも、なんかいいなあと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
シチュエーション的には平山夢明先生のような、でもそれでいて雰囲気はジブリのような、童話のような……不思議な感じです。ノホホンと暖かいのに救いが無い赤頭巾と狼の遣り取りが、すごく切ない作品。でも最後は非常に爽やかな終わり方で、胸のスーッとするお話でした。僕自身が救いの無い話ばかり書いているので、余計にこういう話が書ける方は羨ましいです。
他にも素敵な作品ばかりなので非常に迷いましたが、一番気持ちのいい読後感のあったこちらを推薦させていただきます。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
最後までメロディを聴くようにスルスルと読めました。気分と思考と思い出が四季に乗ったリズムが心地よかったです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
場面の描写や使われている言葉の1つ1つがキレイだと思いました。
また、女の抱く絶望感や安堵の心情がひしひしと伝わり、(特に絶望感の描写は、悲しいのだけれどどこか神秘さも感じられる等)とても惹かれる物語でした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
乱立する桃太郎たちに最初から狼狽し、それでも読み進めずにはいられない切り口。読みながら自分の常識が揺さぶられていく感じが、不安でもあり、心地よくもあり。最後の奇妙さは筒井康隆や安部公房、内田百閒を読み終えたときのようでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
面白いというより恐ろしくて、目を背けたいのに読み続けてしまいました。独特の世界観と言葉の選択とリズムが蠱惑的で、いつかこういうものも書けるようになりたいと悔しくなる作品でした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
「マッチの見せる光景」の解釈が素敵すぎる……。原作のキャラをそのまま使う発想しかなかった自分としては、是非見習いたいと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
ただのアバンギャルドではないと気付いた時にぞっとしました。昔こども番組で見た『だんだんだんだん』という歌を彷彿とさせます。不気味な読後感は、私もあまたの桃太郎のひとりだからでしょうか。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
冒頭の文章に惹きつけられ、結末がどうなるのか期待して読んでしまいました。元の作品を読んでみたいという作品です。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
古文である枕草子が現代風で甦ったかのような作品。
比喩と感情が入り混じっている情景は、快活でテンポ良くとても楽しい。
夏を過ぎたあたりから、カバンの中に入っている物が楽しみになってきました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
内容のナンセンス具合がたまりませんでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
「蜘蛛の糸」を、蜘蛛側の視点から描いた話。個人的にこういう類のものが好きということもありますが、それ以上に全体的に深みや味わいがあります。蜘蛛の運命は予測できるのに、最後までしっかり読ませる文章力は素晴らしいと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
短編では自分の描きたいことをいかに凝縮するか、という課題に苛まれるのがわたし。だから、原稿用紙のマス目は、非常に貴重である。この作品では冒頭から、その大切なマス目がひたすら「桃太郎」という単語で埋められていく。一万字という文字制限のある原稿で、コピペ(あるいは単語登録)手法を使うのか、というのが驚きであり、目を惹いた。そしてまだ多分にページに余裕があるにも関わらず、「あとは言わずもがな」と読み手に丸投げしてしまう。それが返ってわたしを「もっと繰り返すところでしょ」という気持ちにさせ、まんまと「桃太郎おかわり」心理作戦にはめられてしまった。引き際が上手く、読者の想像の余地を上手く盛り込んでいると思う。また「舞台上全員桃太郎状態」には、シニカルな笑いを誘われた。実際に主役が何人もぞろぞろ現れる発表会を、観てきたから。