『お局ミチコと僧』
ノリ・ケンゾウ
(『オツベルと象』宮沢賢治)
お局お局って、若い子たちは私を馬鹿にしているけれど、お局だって恋がしたいし愛が欲しいし幸せになりたいの!アラフォー間近、愛に飢えるお局社員ミチコの前に現れたのは、修行中の身である一人の僧侶であった。お局と僧。二人が織りなす、甘くてちょっぴりほろ苦い、大人の純愛ラブストーリー。
『手袋と赤ん坊』
ふくだぺろ
(『北米先住民の民話』)
ある女が赤ん坊を産んだが、あまりに小さくて、人に笑われるんじゃないかという不安にとりつかれ、手袋にいれて川に流した。不安ではない。赤ん坊が流れたのだ。赤ん坊は手袋とともに川を下る。手袋は赤ん坊に愛情を持っているが、一方でいつまでも守れるのではないことも知っていた。
『僕は普通のサラリーマン』
二月魚帆
(『シンデレラ』)
僕は普通の、どちらかといえば地味なサラリーマンだと思っていた。ある朝、いつもどおり会社へ行こうとすると見知らぬ男が立っていた。いつもの電車に乗りたい僕は男に急いでいる旨を伝えるも、どうしても履いて欲しい靴があると言う。ああ、そういえば最近のニュースでそんなことを言っていた。
『歌えメロス』
ノリ・ケンゾウ
(『走れメロス』)
メロスは激怒した。大手メーカー勤務の超一流営業マンのメロスは、行きつけの牛丼屋で邪智暴虐の限りを尽くすバイトリーダーを除くべく、牛丼屋への転職を決意する。猶予は三日間。メロスよ、三日後の日の出までに完璧に仕事の引き継ぎや送別会を済まし、バイトリーダーの悪の心を打ち砕くため、歌え!
『こんにちは、世界。』
二月魚帆
(『貉(むじな)』)
半年前、通勤の行き帰りに寄っていたコンビニで働く女の子に告白し、フラれた僕。落ち込む僕は友人の本村の強引な誘いで街コンに渋々やってきた。しかし女の子の顔がみんな同じように見えてしまい、誰に話しかける気力もない。そうしてぽつんとカウンターで一人座る僕に、一人の女が話しかけてきた。