『未来を映す鏡』
三坂輝
(『よくばりな犬』)
34歳のカナエは深夜にその日を振り返る。久しぶりに本業の写真撮影。現場にいた若い女の子の笑顔が思い返された。その笑顔のせいで仕事は上手くいかず、次の仕事の目途がつかないと焦るカナエ。未来はどうなるか。カナエは深夜2時22分の鏡には未来の自分が映るという都市伝説を思い出した。
『おしまい食堂の夜』
大町はな
(『夜汽車の食堂』)
月夜にふと辿り着いた「おしまい食堂」は、遠い昔、息子の修哉と出掛けた駅舎によく似ていた。「うちでお出ししているのは、大切な方と最後に食べたお料理なんです」車掌のような恰好をした「その人」は、食事を終えた後でそう言った。人生のおしまいに、あなたは一体、何を食べるのだろうか。
『四諸茶々村拾遺』
相馬光
(『遠野物語』)
ある老婆は「何者か」に命を救われ神社を建立した。ある男は「何者か」によって知らない場所へ飛ばされた。四諸茶々村で起こる不可解な出来事は100年後、200年後の世界を巻き込んである一つの結末へと集約されていく……。
『出雲での出会い』
岩﨑奈美
(『出雲神話』)
三十代に差しかかり、仕事も恋も上手くいかない日常を飛び出して、ひとり行く先を決めない旅に出たみな子。神々の息づく出雲までたどり着くと、そこで不思議な出会いをする。そして、みな子の人生は、少しずつ変わっていく。
『朝子の後悔』
中村市子
(『地獄変』)
大学生の幸輔は夕花という女子学生の手に一目惚れし「美」に目覚め、夕花の絵を描き始めた。しかし、なぜか日に日にやつれていく夕花が心配だった。実は夕花には医学部を中退した過去があり、その選択に後悔し苦しんでいた。ある日、幸輔はバスタブの中で変わり果てた彼女の姿を目撃するのだが……。
『三つの条件』
太田純平
(『三つの宝』)
モテる男の三つの条件、それは「顔」「性格」「スタイル」である。そう、思い込んでいる中学生の浦西は、ある日、顔も、性格も、スタイルも良くなる魔法のアイテムを手に入れる。
『天国の午後』
山本信行
(『蜘蛛の糸』)
天国の神様はある日気紛れに、地獄で苦しむ一人の男に天国へ登る機会を与えた。男は天国から垂れて来たのかも知れない蜘蛛の糸に確信も無くしがみつき登り始めるのだが。