『花冠の約束』
ハンチング純一
(『自殺について』他四篇)
最愛の先生と結婚の約束をしたその人は、花嫁衣裳のまま手漕ぎボートのうえで先生の愛読書を読んでいたがさっぱり意味がわからない。たずねようと先生のボートを追いかけるも、届かず、そのうちに、ダム穴のような、水面にぽっかりと開いた穴へと、ボートもろとも飲み込まれてしまうのだが……
『みせもの』
ひろくん
(『鶴の恩返し』)
白鳥珠子は、若くして末期がんを宣告される。いじめられっ子の珠子は早くに両親を癌で亡くした。珠子の一番強烈な思い出、それは幼い頃、母親と見た見世物小屋の光景だった。蛇喰いの芸が珠子には忘れられなかった。珠子は自分の生き様を焼き付けるべく、癌の事実を隠しながら見世物小屋に入団する。
『蟲の禍』
篠崎フクシ
(『文字禍』)
遣唐使に随行した北淵鈔烬は、謎の老人から奇妙な急須を手に入れる。その急須を使い、蟲を煎じて飲むと望んだ姿に変身できるという。はたして、鈔烬は老人の言う通り実践するのだが……。