『王様の選択』
室市雅則
(『裸の王様』)
王様は裸であることを自覚していた。裸でパレードをするのは避けたいが、すでに大勢の人々が王様の新しい衣装を一目見ようと集まってしまっている。さて王様、どうする。
『カエルの婿』
木江恭
(『カエルの王様』)
毎年梅雨になると姿を見せるカエル。一体何の約束をしたの、と母は笑う。幼い頃はカエルを怖がっていたわたしは段々と親しみを覚えていく。ある日カエルはわたしに言った。お嬢さんのお力になりましょう、その代わり、わたくしのお願いごとも叶えていただけますか。
『REBOOTER / リブーター』
結城紫雄
(『変身』カフカ)
ある朝目を覚ますと、“虫人間”=「仮面ライター」に変身してしまったニート兼声優オタク・大下カズト。超人的な力を手にしたカズトはとりあえずアルバイトを始めてみるのだが……
『熱海の魔女』
伊藤なむあひ
(『ヘンゼルとグレーテル』)
魔女だなんて言われていてもわたくしだって人間だし寂しいものは寂しいのです。お母さまが遺してくれた家のおかげで住むところにも食べるものには困らないし、服だって代々伝わる黒のワンピースと三角帽がフルサイズでそろってはいます。
『ホープスカイ』
和織
(『うろこ雲』)
無表情な銀の妖精を携えたどうしようもない僕を、ある少年がじっと見ていた。でもその少年は実はそこにはいない。僕に彼が見えるのは、本当にたまたまの暇人であったからだ。
『一物』
山羊明良
(芥川龍之介『鼻』)
内藤善治の一物は大きく、太かった。それゆえ周囲から馬鹿にされ、本人もまた多分に悩まされていた。そんなある日、二人の姉たちが短くする方法を知って帰ってくる。治療は見事に成功し、内藤善治の一物は一般男性の平均サイズにまで縮んでいく。物事は順調に進んでいくように思えたが・・・
『白梅、紅梅』
冬夜
(『しらゆきべにばら』)
「ずっと一緒にいようね」という幼い約束を、私達姉妹は健気に守っていた。梅の香りの飛んでくる季節。ばぁちゃんが亡くなって、私達は実家へ帰る。葬式の後、庭に花を咲かせる白と紅の梅の木の下で、姉から告げられた告白とは。
『邪悪の森』
和織
(『狂人は笑う』『猟奇歌』夢野久作)
一見狂っているようには見えない患者Y。元俳優の彼は、その魅力をメデューサのように素早く使いこなし、あらゆる者の心へスッと入っていく。彼の異常さは、いわば個性のようなもの。その厄介で危険な個性と、戦い続けることを定められた医師。