『Loveless』
五十嵐涼
(『ピノキオ』)
AIにより作られた街、人、動植物。そんな街で僕はルカという女子高生と出会う。彼女はすっかりAIの飼い犬となった他の人達とは違い、人間であることの素晴らしさを理解していた。人であることとは?人の価値とは?果たして僕には理解出来るのだろうか・・・。
『ブラッド・チョコレート』
和織
(『カーミラ』)
白い光を宿した少女は、現実が消え去ったような錯覚を私に抱かせた。甘い呪いは美しい魔法と同じ。特別なフレーヴァーは夢の為に注がれつつけ、名前は繰り返される。
『VR恋愛住宅』
柿沼雅美
(『恋愛曲線』)
私たちの世界から所謂昔の恋愛が無くなって60年くらいたつらしい。どんどんと減り続ける人口、ロボットに代わられる仕事、自然災害で健康な人間が失われていく現実、これらを考慮して対策がされた世界が今の私たちの時代だった。
『生贄』
志水崇
(『魔術』芥川龍之介『夢十夜』夏目漱石)
私は、男手一つで育てる息子との暮らしを守る為に、経営する会社を立て直そうと、〈黒魔術〉の力を持つ洋館の主を訪ねる。主は、魔術を身に着けるには悪魔に最も大切な〈何か〉を差し出す必要がある、と私に告げる。私がその〈何か〉を脳裏に浮かべると、魔術を得た証の〈黒い影〉が私の背後に現れる。
『かえるのうたが』
広瀬厚氏
(『かえるの合唱』)
初夏のある日小学生の息子が近所の田んぼでおたまじゃくしをすくいバケツに入れ持ち帰った。私は息子のすくってきたおたまじゃくしを金だらいに移してやった。おたまじゃくしはやっとカエルらしくなってきた頃全滅してしまう。夏が過ぎ秋も終わり年が明けたある晩の帰り道家から妙な音が聞こえてきた。
『銀杏並木の最後の一葉』
渡辺明日翔
(『最後の一葉』)
ある大学には、恋に関するジンクスがある。それは、並木の葉が散り終える頃までに恋人ができなければ大学生の間恋人ができないというもの。それに悩む主人公とその友人がとった行動は…
『A Boy Behind the Shutter』
植木天洋
(『オリバー・ツイスト』)
フリーマーケットの手伝いをすることになった私は、そこで「まつなが」という少年と出会う。彼は子供らしくない無気力感に包まれて、膝を抱えて座っていた。私は彼と少しずつ関わっていき、彼もゆっくりとだが心を開いていく。しかし、ある出来事で積み上げた努力のすべてが失われてしまう――。
『変人老科学者の計画』
十六夜博士
(『旅人とプラタナス』)
12歳の少年は、村の外れに住む、おジイさんのところに遊びに行くのが大好きだった。おジイさんは、科学者でいろいろな発明をし、それを見せてくれるからだ。一方、村の人々は、おジイさんのことを、役立たずの変人科学者とバカにしていた。そんなある日、おジイさんの発明が問題を引き起こす・・・
『道』
藤野
(『古事記』「黄泉比良坂」)
旅の途中で山中の道を歩いていた。一本道で迷うはずもないのに行けども行けども道は終わらない。だんだんと日が傾いてくるにつれ、気持ちだけが焦っていく。その時、後ろから何者かの足音が聞こえてきた。足を緩めても早めてもぴったりとついてくるその足音はいったい何者なのか。