『お局ミチコと僧』
ノリ・ケンゾウ
(『オツベルと象』宮沢賢治)
お局お局って、若い子たちは私を馬鹿にしているけれど、お局だって恋がしたいし愛が欲しいし幸せになりたいの!アラフォー間近、愛に飢えるお局社員ミチコの前に現れたのは、修行中の身である一人の僧侶であった。お局と僧。二人が織りなす、甘くてちょっぴりほろ苦い、大人の純愛ラブストーリー。
『浦島先輩と太郎』
大前粟生
(『浦島太郎』)
俺たちが亀をいじめていると浦島先輩がやってきて、亀に殴る蹴るなどの暴行を加えた。そこに太郎がやってきて亀を助けようとした。浦島先輩は太郎に殴る蹴るなどの暴行を加えた。浦島先輩はちょっとやばい人だからだれも浦島先輩には逆らえない。俺たちは浦島先輩を排除したい。
『寝太郎、その後』
伊藤円
(『三年寝太郎』)
旱魃から村を救った三年寝太郎の偉業は瞬く間に広がり、村に婚姻希望者が殺到した。選ばれたのは婚期の遅れを理由に強引に送り出されたユメだった。とはいえ英雄との生活、ユメも幾分期待したが、寝太郎は偉業など嘘みたいに寝ていた。どころか夏、村に再び危機が訪れても、起きようとしないのだった。
『老人の恋は冬の花』
ふくだぺろ
(『メキシコの諺』)
きみのことを何も知らないまま、いま、わたしはサルスベリのコトバで語りはじめる。ベトナムから来たおじいちゃんが恋をしていることに、チャイナから来たおばあちゃんが気づいたこと。おじいちゃんとおばあちゃんがどうやってジャパンで出会ったのか。なぜおばあちゃんは嬉しそうにしているのか。
『マッチ売りの少女とぼく』
霜月りつ
(『マッチ売りの少女』)
5歳のマコトは幼稚園で「マッチ売りの少女」のお話を聞く。あまりにも悲しい終わり方に納得のいかないマコトは、どうすればマッチ売りの少女を助けられるのか考え続ける。そんなマコトの前にマッチ売りの少女が現れる。マコトは少女に三本目のマッチをすらないように言うが………
『こびとの町』
卯月小夜子
(『こびとの靴屋』)
廃業寸前だった靴職人のハンスは、眠っている間に靴を作ってくれるこびとたちに頼りきり、仕事をしなくなってしまう。ある晩、いつものように革を残して工房を後にしようとしたところ、こびとたちに呼び止められる。パン屋も仕立屋も廃業の危機から立ち直ったその町で、こびとたちの思わくとは……
『リア王異聞』
黒田女体盛
(『リア王』)
「風よ、吹け! 雨よ、降りかかれ!」自分への愛と忠誠を信じ、領土を分け与えた二人の娘の冷淡な仕打ちによって城から追い出されたリア王は、絶望のあまり正気を失い、荒野を彷徨いながら荒れ狂う嵐の空へ向かって声を限りに叫び続けていた。
『vanishing twin』
朝蔭あゆ
(夏目漱石『変な音』)
ぼくの傍らには、絶えず聞こえる小さな音があった。しかしぼくと全てを共有していたその音は、ある日ふつりと消えてしまう。ぼくはその正体も知らないままにそれを失い、たったひとりで世界に一歩を踏み出した。その時ぼくははじめて、失ったものの運命に気付いたのだ。
『母親』
中島もらる
(『交尾』梶井基次郎)
祐作は子を欲していた。だが付き合っている女は決して応じない。祐作はこれが最後の晩になるだろうと嫌がる女を無理やり犯そうとするも、サイレンがこれを妨げる。祐作はこの女を抱くことはもうないのだろうなと思いつつ、夜警に急かされてアカカナキリムシの捕獲に向かうのだった。