『ハッピーエンド』
浴衣なべ
(『わらしべ長者』)
幼いころの失敗が原因で、朝の占いを参考にして行動しないと不安になってしまうようになった私は、占いのおかげでクラスメートの山田さんと話をするようになった。 山田さんと仲良く過ごすうちに人との繋がりが広がっていき、意図せず失敗をやり直す機会を得ることができ……
『百本の芍薬』
末永政和
(『百夜通い』『夢十夜』)
私のもとに百夜を通い、その証に毎夜芍薬の花を置いていきなさい。すれば私は百番目の夜に、あなたと契りを交わしましょう。小野小町が告げた条件は、やがて男と女の運命を狂わせていく。
『おいしくなる魔法』
枯木枕
(『ヘンゼルとグレーテル』)
少年はお菓子の家を食べた罪で魔女の怒りを買い牢屋に閉じ込められた。妹の助けはいつまでも来ない。お菓子の家以来なにも食べていない少年は飢えに意識を揺さぶられながらも、魔女に助けを請う。魔女は少年にこれに一日でも耐えられたら少年を外に出すと約束して「おいしくなる魔法」をかける。
『屋根裏の文吾』
末永政和
(『屋根裏の散歩者』)
共同住宅の屋根裏に潜み、盗みを働くのが文吾の生業だった。相手は一人暮らしの老人と決めている。ある日、屋根裏の文吾の耳に届いたのは、老婆の「ごめんなさい」という言葉だった。
『ベーカリー ヘクセンハウス』
鳩羽映美
(『ヘンゼルとグレーテル』)
会社を辞めて半年。再就職も決まらず半年で20kg太ってしまった「私」は、コンビニやスーパーで食料を買い込んでは暴飲暴食するのをやめられないでいた。そんなある日、「ヘクセンハウス(お菓子の家)」という名のパン屋の前を通りすがった「私」は、そこで魔女のような風貌の女主人と出会う。
『常春の国』
金子葵
(『桃花源記』)
銀行営業職の野上ツキコは、仕事と育児の両立に閉塞感を感じる日々を過ごしていた。早春のある日、ツキコは客先の邸宅で、突然神代の国に迷い込む。そこで彼女が見たのは、すべてが開き結ばれていく「常春」の世界だった。
『私は私に飽きるから私を』
枯木枕
(『刺青』)
みんな服や髪型には飽きてころころ変えるくせにさ、自分の顔っていうか肉体には飽きないってどういうことよ? 私はモグリの医者の手術台で整形を繰り返す。外側に矯正されて変形する内面をぐにゃぐにゃと脅かしながら。