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ぽつりとジョウさんは言葉を零す。「ねぇ翔ちゃん夏って好き?」ってふいに聞いてきた。
答えようと思っていたらジョウさんは、「翔ちゃんに怒られるかもしれないけれど、パパさんと、翔ちゃんとは家族みたいに思ってた時があるんだ」
「家族。僕は恵まれなかったからさ。翔ちゃんとパパさんに出会ってそんなきもちになっていたことがあったんだよ。夏ってさ、家族を思い出すから嫌いだったんだ」
ジョウさんのハサミの音が耳のそばで細かく刻む。
「でもさ、パパさんと翔ちゃんとも夏を過ごしてみたら夏きらいじゃないなって。むしろ好きになっていた」
俺がじっと喋らないでいたら、「うざいって思ってる?」
俺はそれでも言葉にならなくて、ハサミの音がかちかちなるのを聞いていた。
そして、ジョウさん髪切ってほしいんだって言った時とおなじように俺は言った。
「ジョウさん、家族になればいいよおれんちの」
ジョウさんと鏡越しに目があって、翔ちゃんそういう冗談はぁ?って言いながらもあの日みんなで会っていた時のジョウさんの笑顔が少しもどっているような気がしていた。