メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『パワフルなおかつストロング』結城紫雄

  • 応募要項
  • 応募規定

 権藤さんがパチン、とダッカールを景気よく鳴らした。
「じゃあ、おあいこということで」

***

 一度家に戻る、という権藤さんと駅まで歩く。以前は土曜の早朝でも始発を待つ人がたくさんいた中目黒駅までの道のりも、今は視界に数えるほどしか人間がいない。
「お店、行きにくくなっちゃったなあ」
「ぜひ次はアメリ見直した感想を聞かせてください。それに強い女性になるんでしょう、その第一歩だと思って」
「権藤さんは自分の振られ話を不特定多数の前でぶちまけたことないから言えるんですよ」
 肩を落とした私を3月の風がなでた。うなじに当たる春風が新鮮で心地よい。
「そういえば権藤さん、レオンとかソフィー・マルソーも好きでしたよね? それっぽいこと言って、私を自分好みのフレンチボブの練習台にしただけなんじゃ?」
「どうでしょうか」
 うそぶく権藤さんの横顔をじっと見るが、マスクに覆われていてよけい表情が読めなかった。
「だいたい権藤さんフランス映画って顔じゃないでしょうが」
「ほらまた。外見で人を判断しないほうがいいですよ、古いです」
 それは確かにそうだ。
「ねえ、『失恋した酔っぱらいが突発的に髪を切りに来る』って、美容師あるあるだったりしません?」
「なんですかそれ」
 聞いたことないですね、と言ったあと、不意に立ち止まった権藤さんは低い声で笑った。私もつられて笑い出す。
 権藤さんと私の笑い声だけが、朝の目黒川を上っていった。

4/4
前のページ

第3期優秀作品一覧
HOME

 

             

               

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 株式会社ミルボン
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。

1 2 3 4
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー