メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『ガーベラ』ウダ・タマキ

  • 応募要項
  • 応募規定

 結衣さんは私の隣に腰を下ろした。
「次、頑張ったらいいんだよ。奈々はまだ二年なんだしさ」
 そっと、心に置かれるような優しい言葉だった。私はその言葉に「うぇぇーん」って、まるで赤ちゃんのように余計に泣いてしまったっけ。
「ねぇ、奈々。みんなで胸に付けたガーベラの花言葉って『希望』なんだよ」
 結衣さんは私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。

「また、希望を胸に前を向かなきゃね」
 ガーベラを見ながら結衣さんが呟いた。そうだ、立ち止まっている場合なんかじゃない。
「よし! さぁ、気合い入れて切りますよ!」
 私の気持ちはすっかり軽やかになった。
 鏡に映る結衣さんは、そっと目を閉じた。僅かに上がった口角は笑みを浮かべているようで、とても安心しているように思えた。
 いつものように、そう、何度も何度もカットしてきたように、私は一つ一つに気持ちを込めて結衣さんの髪にハサミを入れた。

 そして―
 そこには、確かに結衣さんがいた。

「お疲れ様でした」
 視線を鏡に向けたまま、顔を左右に向ける結衣さん。私は後ろに立って鏡を構えた。結衣さんの口が動く。ドキッとする私。
「ありがとう、さすが奈々ね」
―良かった
「こちらこそ、ありがとうございました」
 私は深く頭を下げた。
「また、自分の髪が伸びたらお願いします」
「はい、喜んで!」
「さぁ、これから仕事にも復活してまたバリバリ働かないとね!」
「ええ、頑張りましょう! お互い前を向いて、希望を持って!」
 結衣さんは心から笑った。
 この仕事に出会えた私は幸せだ。心からそう思った。

4/4
前のページ

第3期優秀作品一覧
HOME

 

             

               

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 株式会社ミルボン
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。

1 2 3 4
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー