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『心色トリートメント』小山ラム子

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「じゃあ行ってくる」
「あ、うん」
 言いたいことは色々あったがうまく言葉にならず、結局黙ったままお母さんの後姿を見つめた。
お母さんの帰りをリビングで待っていると、階段を下りる音が聞こえてきた。弟の涼太がドアを開けて入ってくる。そして中にいた美月を見て目を丸くした。
「え、姉ちゃんどうしたのそれ」
 お母さんが怒鳴っていた声は聞こえなかったのだろうか。きっと部屋でヘッドフォンをしていたのだろう。
「まあ、気分転換」
「なにそれ」
 涼太がふっと噴き出す。
「いいんじゃない? 姉ちゃんちょっと真面目すぎだし」
 今度は美月が目を丸くする番だった。もっと馬鹿にされるかと思っていたのだ。
ちょうどそのとき玄関のドアが開く音がした。お母さんに続いて、午前中から出ていたお父さんも帰ってきたようだ。
「姉ちゃんが不良になった」
 廊下の向こう側から歩いてきた二人に涼太が笑いながら報告する。お母さんは困ったように笑い返し、お父さんはさっきの涼太そっくりの表情をした。
お父さんがうろたえたようにお母さんを見る。お母さんはその視線を受け止めつつ美月の髪に目をやった。
「まあ染めちゃったものはもう仕方ないしね」
 三人で一斉にお母さんを見る。
「あれ、お母さん怒んないんだ」
 涼太が意外そうな声をだす。やはり帰ってきた直後のやり取りは聞こえていなかったようだ。お母さんは小さくため息をついた。
「学校でなんて言われるかは知らないけどね」
 やはりまだ怒ってはいるらしい。だけど感情的な声ではなかった。
 翌日、美月は担任の先生に呼び出しを受けた。注意、というよりは「なにかあったの?」と美月を心配している様子である。
「イメチェンです。飽きたら戻します」と言う美月に先生は戸惑いながら「そう」と返した。そして「原さんはあんな感じだからもう諦めてるけど」とついでのように言う。
 原さんはスカートも短くばっちりとメイクもきめている美月のクラスメートである。その髪色は美月よりも明るい茶色でほぼ金髪に近く、他にピンクやシルバーのエクステもつけていた。
 だけど派手な外見とは裏腹に朗らかで親切な子だ。そんな彼女をショッピングモールで見かけたのは二週間前のことである。
 原さんはとても楽しそうにお店とお店の間の通路を歩いていた。隣にいたのはお母さんであろうが、原さんとは正反対の質素な服装で美月はとても驚いた。しかしそれ以上に驚いたのは、原さんが甘えるようにお母さんとくっついて歩いていたことだ。
 自分は絶対にそんなことはしない。それにお母さんは美月によく小言を言うが、涼太には何も言わない。だから美月は涼太をあまりかわいいとは思えなくなっていた。昔はかわいがっていたはずなのに。

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