
青年が訪問美容師を目指すきっかけとなった出来事を回想した話。祖母が軽度認知障害を患い、認知症グループホームへと入所することになる。入所後、問題を抱えた祖母を癒すため、訪問美容師を依頼する。美容師がヘアカットしていく過程で、次第に祖母の尊厳が取り戻され問題が改善されていく。
研修の帰り、旅に来ている“私”は、バスで「お客様の中に、美容師の方はおられませんか?」というアナウンスを聞く。別れた彼氏を偶然見かけた女性が、会って別れを言いたいけれど、今の髪の状態では会えないという。出発まであと一時間、“私”は設備のない状況で、彼女の髪をカットすることになる。
28歳、独身。実家には帰らないと決め、シャアハウスに残った。バイトが減り、どうしようかという時、地域貢献とか人のためとか似合いそう、と言われただけで、便利屋さんとして曽田さんの家を訪問することになった。築何十年かも分からない家は元々は美容室で、埃と、どこか懐かしい匂いがした。
思春期の娘と夫と暮らす専業主婦の主人公は家庭内でのコミュニケ―ションに悩みを抱えていた。空しさにも似た気持ちになる度、思い出すのはいつも同じ美容室だった。『あの頃に戻りたい』ふとそう思った時、心の中で何かが弾け、見えなくなった何かを取り戻すように主人公は思い出の美容院を訪ねた。