「彼氏に振られたんです。しかも、他に好きな人ができたからって。本当にショックで、もう無理です。」
わーわーと泣き喚く明日香に圧倒されて、男はどうしてよいやら立ち上がることすらできずにいたが、やだて明日香は、女性社員に肩を抱かれながら事務所の奥へと連れていかれたのだった。
なおも聞こえてくる明日香の泣き声を聞きながら、男は明日香にうらやましいような感情を抱き、なぜか自分も大声で泣きだしたいのをぐっとこらえて窓の外へと視線を移した。窓の外には嫌というほどすがすがしい青空が広がっている。
確かに恋に年齢は関係ない。しかし、その先を望むのならば時の流れによる変化をも受け入れ、そして自分自身も変わっていかなければならないのだ。
この変わりゆく蒲田の町で、男もまた大人へと変わっていくことを固く決意したのだった。